とある少女の話です。
	なんでも彼女が幼いころ、運動会で仮装行列があったとか。
	「自分の好きなもののカッコをしてみんなで並んで歩く」
	そう聞いた彼女は、母親に自分の好きなものを伝え
	衣装を用意してもらいました。
	当日、お友達のカッコをみた彼女は、愕然としました。
	みんなマンガやアニメのキャラクターのカッコをしたり
	お姫様やおまわりさんなどのカッコをしているではありませんか。
	みんな、親が作ってくれたらしい衣装を着て、自慢げな顔をしている。
	それを親や先生たちが手をたたいて「わぁっ!カワイイ」「よくできてるね」
	などと言っている。
	それなのに自分のカッコときたら。。。
	彼女は体操服の上に、自分の体には大きすぎるぶかぶかのスーツを着て
	歩いていました。
	それは紛れもない、彼女の父親のカッコでした。
	彼女にとっては「自分の好きなもの」=「パパ」であり、
	「パパ」=「スーツ姿」だったのです。
	彼女の母親によれば、周りで見ていたオトナたちは
	彼女が何のカッコをしていたのか、パッと見では分からなかったそうですが
	すぐに彼女のほほえましい勘違いに気付いた様子で、
	ひときわ大きな拍手が起こったそうです。
	彼女自身は、母親に「私はパパのカッコをする」と伝えた時に
	「自分の好きなもの」というのが、そういうことではなく、アニメのキャラクター
	などに扮することだと教えてほしかったと言っていますが、きっと彼女の母親は
	娘のちょっとした勘違いを、ほほえましく思ったに違いありません。
	今は私の義父となった「パパ」は、この昔話をすると
	決まって嬉しそうな照れ笑いをするのでした。
T.O.
