2011年に記憶に残った本のご紹介

ええと、2012年の最初の月という事で、2011年に読んだ本の中から、記憶に残った本を5冊ご紹介致します。IT系の本が無いのは、私の勉強不足と言うことで。 

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『リスクにあなたは騙される―「恐怖」を操る論理』 著者:ダン・ガードナー 

テロや犯罪、病気などのリスクを必要以上に恐れている状況を認知心理学の知見で読み解いた内容で、事例が豊富でとても面白い。統計の見せ方によって、安全にも危険にも印象を変えられる事がよく分かるので、読み進めるにつれ、物の見方が鍛えられていくと思います。震災以降、多発しているデマに惑わされにくくなるかもしれません。 

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『困ってるひと』 著者:大野更紗 

突然難病患者になってしまった著者の闘病記。色々なメディアで紹介されているので、ご存知の方も多いと思います。難病物なのに、文体も軽いし、笑えるし、当事者になってみないと分からない現行制度の問題点も見えてきます。闘病記にありがちな同情を煽る表現が周到に避けられているせいか、著者に起こった出来事ではなく、多くの人に起こるかもしれない出来事として考えさせられます。 

著者は 「SYNODOS JOURNAL」 で、やや固めの論考も発表していますので、そちらもどうぞ。この本の 「まえがき」 も「SYNODOS JOURNAL」で読む事が出来ます。 

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『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』 著者:開沼博 

原発事故前から福島原発をフィールドワークしていた若手社会学者による論考。基は修士論文なのだとか。この本も色々なメディアで紹介されているので、ご存知の方も多いと思います。この本で分析される「中央-地方-ムラ」の関係性は、地方出身者の自分にはよく分かりますし、この関係性は原発以外にも適用できると考えます。原発事故発生後、半年以内に出版された原発関連の書籍の中では、数少ない良書だと思います。ちなみに、著者は福島県いわき市出身。 

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『IT社会の経済学 -バークレー流入門講座101-』 著者:青木理音 

海外のIT関係企業の動きをミクロ経済学の視点で解説を加えたエッセイ。この本の基となった個人ブログ 「経済101」 は以前から知っていたので再読する記事も多かったのですが、読み直してもとても面白い。経済学を学ぶための本というよりも、経済学的な視点で考えるとどうなるか、というきっかけを提示してくれる本だと思います。 

現在の 「経済101」 のサイトは、個人ブログから新しいドメインに移行し、コンセプトを変えて生まれ変わりました。 

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『不完全さの醍醐味 クロード・シャブロルとの対話』 著者:フランソワ・ゲリフ 

仏の映画監督クロード・シャブロルのインタビュー本。昨年、東京ではクロード・シャブロル監督の旧作の劇場公開や 回顧上映 (リンク先はpdf)が行われたので、読み終えた後も、何度か読み直しました。シャブロルは監督作が多いため、1本辺りのインタビューの内容が短く、正直言って物足りないのですが、ちょっと口が悪く、気の良いお喋りな近所のオヤジの話を聞いているみたいでとても楽しい。 

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ここまで簡単な紹介しか出来ませんでしたが、このブログで興味を持ち、紹介した本を読んでくれる人がいてくれると嬉しいな。 

ちなみに、今回の紹介本の中に小説が含まれていないのは、ここ数年、昭和の大衆作家「源氏鶏太」の同じような話ばかり読んでいるためです。こちらの話はいずれまた。