応用情報技術者試験の社内勉強会

弊社では社員の情報処理技術者試験取得を推進しております。

晴れて合格した時には給料のベースアップや一時金などの支給があるものの、取得までの道のりは長らく社員の自己努力によるものでした。

そこで、去年(2014年秋)の試験から、社内で応用情報技術者試験を対象とした試験対策セミナーを始めました。以前から小規模な試験対策の取り組みはあったのですが、大々的に仕組み化するのはこれが初めてです。この記事では、セミナーをどのように行っているか、また得られた知見を、講師を担当した立場で書こうと思います。

セミナーをどのような形式で行っているか  第一弾から第二弾への改善~

第一弾(2014年秋試験向けセミナー)の開催概要と課題

ネットワーク、セキュリティ、データベース、サービスマネジメント分野についてそれぞれ 2 時間枠で行いました。講師がホワイトボードの前に立って説明する形式で行い、使用したスライド枚数は 1 セミナーあたり 50 枚程度。広く網羅的におさえる内容としました。また、ポイントごとに問題を用意し受講者に解いてもらいます。

ただ、課題もありました。このセミナーの進め方で果たして受講者が応用情報の問題を解く「応用力」を身につけられるかという問題です。思えば、私が自分で勉強する際は書籍中心の学習となりますが、個々の技術が全体の中でどのような位置付けであるか、その技術の存在する意味までは見いだせず、午後問題で苦戦することが多かったです。また、例え試験に合格できたとしても、本質理解していない技術要素は忘れるのが早いように感じます。そもそも、2 時間枠で講師の話を聞く時間が長いセミナーは集中力を保つのが難しいものです。

第二弾(2015年春試験向けセミナー)での改善

第一弾の課題に対応するために、目を付けたのが応用情報技術者試験で実際に使われた午後問題の過去問です。実際によくある典型的なシステム構成や、事例としてありそうな内容になっていて、スライドに落とし込むだけで体系的に学ぶことができるようになると思い、第二弾となる 2015年春試験向けのセミナーで教材化しました。

例えば、平成26年春試験の情報システム開発の問題。スマートフォンなどの端末上で動作する利用者同士の待合わせを支援するアプリの開発をテーマとした問題で、この問題を解くだけで UML のクラス図、シーケンス図、そして汎化、集約、継承といった考え方を学ぶことが出来ます。具体的なストーリーの中で、各技術要素がどのように関わりあっているかを学べる教材を作成しました。

 

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セミナー時間の内訳は、午後問題をもとに作成した教材の講座を 30 分、午前問題演習と解説を 30 分、午後問題演習と解説を 50 分で間に休憩を 10 分挟み計 2 時間で実施しました。例えば、本を読んだだけでは、プログラミングは恐らく出来るようにならないですが、情報処理試験でも同様のことが言え、手を動かし自分の頭で考えることを重視したセミナープログラムにしています。

また、試験の過去問題から教材を作成するときの問題点が、細かな枝葉の知識で漏れが多くなることです。そのため、用語をコンパクトにまとめ素早く確認できる「クイックチェックカード」を作成しました。短時間で用語をパッと見渡せるので、なかなか便利な教材です。

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何が理解できていないかを検知する仕組み

セミナーでは受講者が何を苦手としているか、またセミナーの説明で何を理解できていないか検知する仕組みをいくつか用意しています。

  • 午前問題を解いたあと、受講者に一人一問ずつホワイトボードで発表してもらう
  • 午前の過去問を通しで解いてもらった後に採点し、分野ごとの正答率を算出
  • 本試験が開催された週に振り返りを実施

ただ解説して終わるのではなく、受講者からのアウトプットを見ることで理解できていること、できていないことが見えてきます。分かったのは、全社的に情報システム開発分野は常識のレベルで浸透していること。一方ネットワーク分野の特に IPv4 のアドレス計算を不得意とする人が一定数いること。ソフトウェアの開発が主軸の会社なので当然の結果ともいえますが、クラウドが普及しインフラを構築する時代から使う時代になっている今、クラウドインフラのアドレス設計をすることも増えてきそうですし、補強したいポイントと考えています。

ベテランはデータベース、ネットワーク、セキュリティは隙が無く安定していますが、普段あまり仕事で使わないコンピュータシステム(ハードウェアや OS)やストラテジ分野の 3 文字略語での失点が目立ちました。このように課題や補強すべきポイントが洗い出されることも、セミナーを開催するメリットだと感じています。

また、教え方がまずかったがために受講者が理解できていないところも見えてくるので、次回以降の改善課題となります。

更なる改善

第二弾(2015年春試験向けセミナー)を開催して感じたのは、合格するには二つの条件が必要だということです。

  • 応用情報技術者試験の範囲の知識
  • 午後問題で、文中の事例、システムに応じた回答を論理的に組み立てる能力

第二弾まではこれらの違いをあまり考えずにセミナーを組み立ててきたのですが、分けるべきだと気づきました。というのは、ベテランにとっては既にある水準の知識を持っていて、もし合格できないとするとペーパー試験への対応能力だと思います。そのため、受講者のターゲットを分けて、それぞれに特化したセミナーコンテンツが必要と考えていて第三弾以降の改善点と捉えています。

得られた知見としては、試験合格水準まで不足しているギャップが何かを見極めることが大事ということで、それは必ずしも知識不足ではないということです。問題文のシチュエーションを踏まえたうえで解答を作成する能力、設問で何を問われているかのポイントを外さない能力、実はこれらの能力が合格水準とのギャップになっているケースがあると分かったことが知見です。その対応には午後問題をたくさん解きこなすことが有効と考えていて、ペーパーテストの経験値をためつつインプットを増やして引き出しを増やすことが第三弾に向けての改善点になります。

ホスピタリティあふれる受講者たち

セミナーを開催して素晴らしいと感じたことがあるので、ここでも紹介させて頂きます。

セミナー終了時に部屋の机や椅子の片づけが必要となるのですが、受講者が自発的に片づけてくれました。また、セミナー開始時も私が会場の会議室の部屋に入ると既に完璧にセッティングされていてホスピタリティを感じました。若手中心で構成される朝礼情報の配信チームもセミナー開催情報を自発的に載せてくれて大変助かり、自発的に気持ちのいい対応をしてくれる人が多いなと改めて感じた次第です。