仕事でも私生活でもPCを使い続けてはやXX年、バリバリのデジタル人生を送っている中年男性にも青年の頃はあったわけで、その時代に使用していたアナログな映像メディアについて語ろうかと思います。
学生時代、8ミリで映画作品を撮っていました。「8ミリ」といっても8ミリビデオではありません。8ミリフィルムのほうです。ジージーと音を立てて回るカメラでフィルムに撮影し、現像後切った貼ったして編集し、映写機でカタカタ上映する、アレです。
最近だと『桐島、部活やめるってよ』という映画の中で神木隆之介くんが撮っていたり、はたまた『あの夏で待ってる』というアニメで主人公の霧島海人が撮っていましたね。
その頃、すでに8ミリフィルムはビデオカメラに押されて急激に市場が縮小しつつあるころでしたが、大学や高校の映画制作サークルではまだまだ主流のメディ アでした。大きめのカメラ屋さんなら割と簡単にフィルムが手に入り、カメラの機能とアイデア次第で合成や特殊効果も可能で、映写機があれば大画面で大勢に 見てもらえる8ミリは、創作意欲を掻き立てる存在でした。
ただし当然、フィルムならではの数々のデメリットもあるわけで、まずなんといってもフィルムと現像代にえらくお金がかかります。フィルム一本で撮れ る映像はわずか3分強。そのフィルム代と現像代を合わせるとその当時でさえ計2,000円程度かかっていました。数十分の作品を作ると万単位でお金が飛ん でいきます。
フィルムなので、現像が上がるまでは出来上がりを確認できません。念のため同じカットを何テイクか撮っても結局使えるのはその一つだけ、それ以外は全部没 カットになってしまいます。ピンボケ、露出不足、シーンの途中でフィルムが終わっちゃった、端っこにスタッフが写ってる~!などなど膨大なNGフィルムも 含めて、文字通り身を切る思いでフィルムを回し、作品を作っていました。
さて、そんな8ミリフィルムですが、過去の遺物と思ったら大間違い。つい最近までフィルムが売られていて、現像サービスも行われていたことをご存知でしょうか。
8ミリフィルムと一言で言っても、大まかに分けてコダックの「スーパー8」と富士フイルムの「シングル8」と2種類ありまして、学生時代にはもっぱ らシングル8を愛用していたのですが、そのメーカーの富士フイルムから、フィルムの最終出荷が2012年春、現像サービスは2013年9月までで終了と なってしまうと発表がありました。
発表があったのはだいぶ前のことでしたが、去年偶然それを知り、寂しいと思う気持ちとともに、
いまさらながら無性にフィルムを回してみたくなりました。
となると、まずは8ミリカメラを入手する必要がありますが、すでにアンティークと化しているフォーマットですので当然新品などありません。ハードオフを丹念に巡って、状態の比較的良いフジカZ800初期型を見つけました。
ジャンク品で1,050円でしたが、ボタンやスイッチもちゃんとついた状態で、レンズにカビもありません。
このZ800というのは、サウンドフィルムこそ使えませんが、各種特殊撮影も可能な当時の高級機です。学生時代にメインで使っていたカメラもこのZ800でしたので、マニュアルなしでも操作できます。
買ってきてフィルムを入れる部分のふたを開けると、前のオーナーが入れっぱなしにしていたのでしょう、フィルムのマガジンが入ったままになっていました。
何が写っているか現像に出してみたい気もしましたが、ここはあえて謎のまま置いておくことにします。
このカメラは単三電池4本で動きます。しかし電池を入れてもうんともすんとも言いません。よく見ると電池ボックスが電池の液漏れでさびていたので紙 やすりで磨いて、再度電池を入れてシャッターボタンをオン、ジジジジジと小気味いい音がして回り、どうやらモーター部には問題がないようです。
でも、あれ?自動露出が効いていません。EEロックダイヤル内の接点を押さえつけるスポンジが溶け落ちてしまって、接点が接触しない状態になっています。ダイヤル部分を分解し、スイッチに新しくスポンジをつけて解決しました。
EEロックダイヤルです。
パネルをはがすとねじ。
ねじを外すとさらにねじ。
さらに外すと接点が見えます。これが接触すると自動露出が効きます。
ダイヤルの先端のスポンジかすを取り除き、
新しくスポンジを付けてくみなおします。
ふ たの丸窓の内側についているスポンジも、見た目は形を維持しているようですが、指で押すとへこんだまま元に戻らないほど劣化しています。これでは遮光の役 目を果たせないので、ホームセンターで代わりになるものを探しました。自転車やルームランナーとかで握る部分に使うスポンジ状のグリップがサイズぴったり だったので、それを輪切りにしてはめました。
フィルムは最終出荷されたものを3本購入しました。家電量販店で1本あたり1,560円でした。
昔に比べると結構なお値段ですが、それでも最盛期に比べ1999年の時点ですでにその1%、さらに10年以上経過してわずか0.1%の需要に対応し続けた富士フイルムさんには本当に頭が下がる思いです。
このフジクロームR25NはISO25の低感度フィルムですので昼間の野外でしか撮れません。いざマガジンポンで野外にGo!
…結果、取り留めもなく撮ったのですが、ビデオの画像とは違う、非常に味のある映像が撮れました。被写体は紛れもない21世紀の風景なのですが、フィルムの質感と映写機の光の加減のなせる業か、なぜか昭和の香り漂う、ノスタルジックな絵になっていました。
映像をお見せしたいのですが、テレシネと動画編集が必要なのでそれはまたいずれ。
先日、現像受付最終日ぎりぎりに3本目、最後となるフィルムを現像に出しました。現像が上がるのが楽しみです。
by S.A.