盆栽の技術の中には、知らない人が聞いたら驚くようなものがあります。
その中でも取り木(とりき)は、盆栽特有の技術という訳ではないのですが、衝撃度の点では一番だと思います。
取り木というのは、一言で言うと、枝や幹の表皮を剥いて、そこから根を出させる技術です。
取り木を行うには、まず枝や幹の樹皮を環状に、つまりグルリと一周剥いてしまいます。
樹皮の下には、形成層と呼ばれる細胞分裂を盛んに行う組織があり、そこを外界にさらすことで発根を促す仕組みです。
今回、取り木を行うのは、「ヤマモミジ」です。
ヤマモミジは、強い日差しを避けるように注意する以外は、寒さにも強い育てやすい樹種です。
ヤマモミジの幹の中ほどの樹皮を、こんな感じでカッターで切りました。
痛々しいです。
発根には湿度が必要なので、樹皮を剥いた部分にミズゴケなどを巻いて、乾燥を防ぎます。
今回、ミズゴケより土の方が扱いやすいと言う情報を入手したので、赤玉土をカップに入れてこの部分を覆っています。
発根が成功すると、木の上のほうに根が生えるというちょっとグロテスクな状況になります。
そんなことをして何が面白いの?と思われるかもしれませんが、取り木の作業はこれで終わりではありません。
発根した部分の下から枝を切り離し、鉢に植えると新しい盆栽ができます。
この盆栽は、元の盆栽より小さくなります。
しかも元の盆栽の形のいい部分だけを切り取るようにすると、小さくて形のいい盆栽の出来上がりです。
盆栽を種や苗から育てるのは大変な作業で、しかも思ったとおりの形になるとは限りません。
しかし、取り木であれば、比較的簡単にいい形の盆栽を得ることができるのです。
なんて、いかにも知った風に解説してきましたが、実は私は取り木を成功させたことがありません。
取り木はそれほど難しい技術ではないそうで、皆さん成功されているようです。
今回、もし成功したら、その様子をこのコーナーに掲載します。失敗したら載せませんので、それとなく察してください。
さて、上の文章を書いてから2か月が経ち、
ヤマモミジはこうなりました!!
幹の途中から根が生えているのが、ゆるキャラの着替えの最中を見てしまったような?、ちょっと気恥ずかしい感じですね。
アップを載せておきます。根がカップの形をしているのが分かります。
幹を根の下の部分で、切り離します。
乾燥が怖いので、少し大きめの鉢に入れます。
少し、丈の割に横幅が広すぎる気もしますが・・・そこはおいおい直していきます。
SHIN